大判例

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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)5721号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実の判断〕原告は被告会社振出有限会社野村電設宛金額三〇万円の約束手形の所持人として振出人たる被告にたいし手形金の支払か求めた。被告は請求原因事実を認めたが、本件手形の振出行為は錯誤により無効であると抗弁しつぎのとおり主張した。すなわち、被告は訴外有限会社野村電設に羽田空港格納庫基礎鋼管抗電気防蝕請負工事外数件の工事を請負わせていたが、右訴外会社代表者野村六郎とその下請工事人高野哲弘が被告方を訪れて、野村電設の高野にたいする下請金の支収が不確実であるから注文者たる被告の保証の趣旨で手形を発行するよう懇請し、他に割引のため譲渡したりしないとのことであり、また野村も、被告が手形を発行すれば前記請負工事も進捗するとの事であつた。そこで被告は手形を発行さえすれば、前記請負工事も進捗するとのことなので同人らの申出を了承して本件手形を振り出した。ところが同訴外人らは当初から請負工事進捗の意思がなくその後の工事を全然しなかつた。被告としては同訴外人らが当初から請負工事を進捗させる意思を有していなかつたことを知つていたならば、本件手形を振り出すはずはないのであつて、右は法律行為の要素に錯誤があるものというべきで、本件手形の振出行為は無効である、とかように述べた。

判決は手形行為の無因性から被告主張のような手形行為振出の動機ないし原因関係上の錯誤は手形行為の無効を来すものでないとして被告の抗弁を排斥し、つぎのとおり説明している。曰く。

「手形に関する錯誤が手形行為の無効を来たすためには、当該錯誤が手形行為自体に存することを要し、手形を振り出すに至つた動機ないし原因関係上に錯誤があり、それがたとい要素に関するものであつても、手形行為の無因性からして、手形行為は無効とならない。(なお、この理は、所持人の害意の有無を問わないと解する。)本件において、被告主張の事情が認められるとしても、それは、手形行為自体に関するものではないから、この抗弁は、主張自体理由がない。」

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